研究概要 |
本調査研究では,約40年以上前から各自治体に設置され始めてきている少年補導センターの動向を行政資料の収集や面接調査と質問票調査を通じて具体的に把握することにより,主に1990年代後半に社会問題となった少年非行の実態を解明しようと試みたものである。対象は各研究者の在住する中国地方と四国地方所在の施設に絞った。 組織面での変遷としては,施設数が漸増で普及・整備は進みつつあるが,この間に活動の比重の変遷に伴い主管部局や名称や設置場所の変更が見受けられ,効率化・合理化の対象にされることもあった。 特色としては,県庁所在地では警察中心の補導活動が高い比重を占めていた。例えば,高知市や2001年までの岡山市,相談業務を中心にした広島市,市独自の少年補導センター化が周辺都市よりも遅れた(すなわち非行対策は少年警察に依存)山口市(1970年)と松江市(1987年)である。 活動実態面での変遷としては,当初は公の街頭補導が中心であったが,近年は私的な相談業務のほうが優先業務として位置づけられる場合も出てきている。 当初の作業仮説として,補導センターの補導件数(早期発見)から警察の不良行為少年の補導件数を経て,犯罪少年が増えるという非行化過程を想定したうえ,いくつかの自治体の非行統計をつなげて変化を比較検討してみたところ,非行の発生には社会構造的要因も絡むなど多様なパタンがあり,一貫した傾向は抽出できなかった。確かに早期発見・早期指導の特別効果や街頭補導による一般的な監視効果もあるだろうが,それらの個別効果の分離・抽出までには技術的に至らなかった。 ちょうど調査対象の時期までに国庫補助金の廃止や市町村合併をへて,地方自治体の行財政改革の時期に入っていたが,まだ施設レベルでの激しい変動はみられない。センターの活動は市民参加による自治的な側面もあるため,地方分権の観点から今後も引き続き重要な分野であろうが,認知度や普及度には限界があり,また,少子化による青少年層の規模収縮もあるので,調査研究を続けて専門機関の効果を検証していかなければならない。
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