研究概要 |
本研究は,国際司法裁判所の近年における新たな機能,すなわち,伝統的な国家間紛争の解決の解決という役割とは別に,国際機構(とくに国際連合)やその加盟国がとった行動ないし決定の国際法上の合法性(Legality)の審査という新しい役割が求められていることに着目し,それがどのような経緯で,またどのような形態で実施されているかを分析することを目的としたものである。この趣旨から,初年度(平成17年度)は,まず裁判所による合法性の審査が問題となった裁判例を洗い出し,それらの具体的事例の内容分析を試みた。実際に検討対象になつたのは,リビアが安保理決定の合法性(合憲章性)の審査請求を行ったロッカビー事件,国連総会の要請による核兵器使用の合法性事件,ユーゴスウビアの請求によるNATO諸国のユーゴ空爆の合法性事件である。翌平成18年度は,これらの判例研究を含む海外の学術論文の分析に重点をおいて調査した。分析対象としたのはマルテンツク(B.Martenczuk),ラウターパクト(E.Lauteipacht),アランジオ・ルイス(G.Aranjio-Ruiz)等の論文である。最終年度は以上の調査,検討を総括する趣旨で,裁判所による合法性審査の国際法上の問題点を明確化することに主眼をおいた。とくに重大な問題を引き起こたのはロッカビー事件での司法審査権,すなわち動連憲章上,裁判所の側に安保理決定の有効性の審査権があるかどうか,さらにNATO諸国のユーゴ空爆の法的根拠とされた入道的干渉論の国際法上の位置づけである。最終年度はこれらの論点を中心に研究をとりまとめた。
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