研究概要 |
研究初年度である平成17年度は,まず研究課題に関連する先行研究の収集及び検討を行った。また,国内における障害をもつ人の雇用・就労支援法制について検討を行った。これらは論文「障害者雇用促進法における障害をもつ人の就労支援制度」にまとめ公刊した。 18年度は,外国の障害をもつ人の雇用・就労制度と当事者への公的支援制度のあり方について,特にイギリスに焦点を当てて文献の収集や現行制度の調査並びに検討等を行った。イギリスは日本と同様に割当雇用制度をとっていたが,1995年の障害者差別禁止法(Disability Discrimination Act)の制定により割当雇用制度を廃止するという法制の大きな転換を行った。そのような状況下でのジョブセンター・プラスによる公的な雇用・就労支援制度などについて調査し,論文「イギリスにおける障害をもつ人の雇用・就労支援制度」にまとめ公刊した。 19年度は,国連やILOから出された条約・勧告等における障害をもつ人の雇用に関する条項を確認し,その到達点について検討した。障害者権利条約に見られるように,国際的な基準・指針として,障害をもつ人の雇用・就労における「差別禁止」,「合理的配慮」,「積極的差別是正措置」のための施策の展開が求められる段階にきており,障害をもつ当事者への雇用・就労支援は今後重要な課題となることが確認された。 本研究を通じて,日本の障害をもつ人の雇用法制においては,一人ひとりの働く上での障害に応じた適切な雇用・就労支援のしくみが必要で,ジョブコーチや障害者雇用支援センター,障害者就業・生活支援センターなどによる障害をもつ人と事業主双方への支援が重要であることを示した。そして,これまでの施策の柱は「雇用率制度」と「納付金制度」であったが「当事者への雇用・就労支援」を加えた3本柱で障害をもつ人の雇用政策が展開される必要があると結論づけた。
|