研究課題
基盤研究(C)
研究領域としての法と政治の対話は、長らくほとんど行われずにきた。そのことに変化がもたらされたのは、国際政治理論のコンストラクティビズムが国際政治構造における規範の役割に着目し、国際政治の側からの接近が行われてからである。本研究では、今日的な理論動向を押さえた上で、海洋漁業資源問題を事例として、規範の変化をとらえ、どのような要因によりなぜ規範が変化するのか、またそのことにより、ある問題領域におけるアクターの行動がどのような影響を受けるかを考察した。海洋漁業資源問題は、資源状況が悪化とともに、環境問題の一貫としてとらえられるようになった。1992年の国連環境開発会議を分析し、環境問題化のプロセスを明らかにする過程で、資源の持続的利用と、利用を必ずしも前提としない保護との両規範の対立、調整問題の顕在化を指摘した。さらに、それぞれの規範に基づく制度間の調整はさらに具体的実行の問題を孕むだけに複雑で、環境制度としてのワシントン条約、生物多様性条約、また本来の漁業管理制度としての各地域漁業機関を分析し、その重複の調整問題を明らかにし、海洋ガバナンスへの課題を考察した。以上のように、本研究は、今日的な国際政治の理論的課題に応えるべく、規範変化のプロセスを明らかにし、さらに、事例研究としては、国際政治のアプローチからは取上げられることの少ない、海洋漁業資源の問題を扱っている点で、新たな領域を開く研究である。特に規範の変化のみならず、異なる制度間での調整の問題は、グローバルガバナンスが要請される今日において、異なる事例における検証がより求められていると思われる。
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世界法年報 第27号(印刷中)
中央大学社会科学研究所年報 第11号
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東京学芸大学紀要 人文社会科学系 II 58
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40015614654
The Annual Bulletin of the Institute of Social Sciences Chuo University
国際政治 第143号
ページ: 106-123
International Relations Vol.143
国際政治 143号
Yearbook of World Law No.27