研究概要 |
2005年度 (1)不確実性下におけるインフラ建設誘因と託送料金に関する理論分析 理論モデルでは,不確実性が存在し,民間事業者がインフラ建設決定権限,規制当局が接続料金設定権限を所有し,インフラ建設が地域の需要拡大効果を持つことを想定している. 主要な結論は次のようである.任意の接続料金のもとで,需要拡大効果および不確実性が大きいとき,インフラ建設は過少となる.そのとき,その補正のため,規制当局は託送料金を上昇させねばならない.逆にインフラ稼動費用が大きい場合,過剰になるので,託送料金を低くしなければならない. 2006年度 (1)オープン・アクセス環境における企業間提携の誘因 逐次的提携形成ゲームをオープン・アクセス環境に応用し,提携が「費用削減効果」を持つケースと「需要拡大効果」を持つケースに分けて分析した.提携が費用削減効果を持つ場合,接続・託送料金が十分低い,あるいは十分高い場合,先発企業は他のすべてのライバル企業を巻き込む提携(全体提携)を結ぶ誘因を持つ.それが中間水準にある場合,先発企業は中規模の提携を結び,後発企業は先発企業のインフラ施設に接続するという「接続環境」が実現することが示された.他方,提携が需要拡大効果を持つ場合,財の補完性の程度あるいは相対的需要拡大効果が大きいほど最大提携が実現しやすいことが確認された. (2)市場融合下における託送料金とネットワーク設備投資誘因の関係 相互参入の可能性を持つ市場融合下におけるネットワーク設備投資誘因について分析した. まず,市場分離下におけるネットワーク設備投資誘因について考察した.その場合,限界費用託送料金のもとでは,需要の非対称性の程度によって,その投資水準が(社会的な視点からみて)過小および過剰のいずれかが発生することを示した.他方,相互参入の可能性がある市場融合下では,需要の非対称性の程度に関係なく,限界費用託送料金のもとで私的設備投資水準が必ず過小になることを示した.また分析結果より,設備投資誘因を導く政策について論じた.
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