研究概要 |
本研究は、我が国の環境保全目的の助成措置をとりまく諸問題を、特にWTO(世界貿易機関)の農業協定その他、関連する諸協定をベースに、自由貿易と環境保全のバランスを維持するFTA(自由貿易協定:Free Trade Agreement)/EPA(経済連携協定:Economic Partnership Agreement)の形成可能性という視点から考察したものである。本来、WTO体制の下では、内国民待遇原則(national treatment : NT)および最恵国待遇原則(most-favoured nation treatment : MFN)の下で、全ての加盟国(2010年現在、153カ国・地域)が自由・無差別な貿易の自由化を拡大することがGATT第24条および授権条項に基づくFTA(自由貿易協定、我が国のそれは、人の移動の部分自由化や経済協力を含む"EPA")の環境保全農業補助金の効果について考察したものである。第1章では、"WTO・FTAにおける貿易と環境の問題"と題して、GATT時代(1947~94)からWTO時代(1995~)における自由貿易と環境保全の関わりを概観し、その中でFTA/EPAの環境保全措置に関わる事項についてまとめた。第2章では、FTA形成下の環境保全型農業補助金を巡る問題の所在を考察するために、日本と韓国のFTA形成を想定して、両国が共有する非貿易的関心事項(Non Trade Concerns : NTCs)の中に含まれる食料安全保障(food safety)、多面的機能(multi-functionality)といった環境保護に関わる事項がFTA/EPAの中でどのように扱われているかにつき考察した。第3章では、"貿易幾何学モデルによるFTA形成と環境関連措置の効果"と題し、経済規模の異なる二国間(A,B)のFTA/EPAの下で、一方の国で食品安全上の問題が発生した場合に、域内(A,B)の産業にどのような動きが理論上で想定し得るかにつき考察した。第4章では、"日本・モンゴル環境保全型FTA形成の可能性と課題"と題して、経済利益と環境保全をバランスさせるFTA/EPAの形成可能性について考察した。 なお本研究の成果の一部は、日本とモンゴルのFTA/EPA(経済連携協定:Economic Partnership Agreement)への適用を想定して、2007年12月に韓国国際経済学会(Korea International Economic Association)にて報告した("Environment-oriented FTA between Japan and Mongolia"2007年12月7日 於:韓国,慶北大学)。
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