研究概要 |
本研究は,当初の研究計画では,アジア諸国のうち,シンガポール,タイ,中国,ベトナムの公共職業訓練制度と企業内人材能力開発制度と実情の国際比較を行い,その結果を,発展した国の経験を後発の国へ移転することを考え,政策立案に役立たせようという意図のもとに開始された。しかし,シンガポールでは,比較すべき製造企業からアンケート・インタビューのアポイントメントがとれず,また,中国では,アンケートは5社ほど回収できたが,インタビューに応じる企業が1社もなく,結局,タイ製造企業8社とベトナム企業12社の企業内人材能力開発の国際比較の研究に修正せざるをえなかった. しかし,公共職業訓練制度と企業内人材能力開発制度は,タイのほうがかなり進展しており,タイの経験は,ベトナムの国家レベルの教育訓練制度に関する立案・政策,さらに企業能力開発政策に利用できる側面を十分に持っており,この研究プロジェクトは,一定の成果があったといえる。 その中でも,日本やヨーロッパからの外資導入の早かったタイの場合は,1960年代の半ば頃から,ILOへの技能訓練制度設置への協力を求めたり,国連開発局や,日本のODAやJICAからの財政的・人的援助により,公共職業訓練制度を充実化したことが,タイの経済・企業の発展をうながす要因なったことがわかる。しかも,タイの場合は,ルック・イースト(日本)だけでなく,ドイツのデュアル・システムを本格的に導入しインターンシップ制度を普及させたことも,公共職業訓練制度の充実化に寄与したといえる。 企業内人材能力開発制度に関しては,企業経営者には,日本への留学経験者や,日経企業で勤務した経験を持つものが多く,品質管理,ISO9000(生産管理、経営管理),ISO14000(環境保全)の管理を統合化したシステムを独自に開発した中小企業もあり,日本の管理技術が,ベトナム在日系企業だけでなく,タイの経験からも,大いに学びうることが,知見として発見しえたことは,本プロジェクト大きな成果といえる。すぐに論文にまとめる予定である。
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