研究概要 |
過去2年の研究を踏まえ,戦略組織の多様なあり方に共通な因子を探りながら戦略組織の行動パターンを検討するとともに,有効な戦略組織行動における社会的責任問題,戦略組織の実践メカニズム,およびその問題点を探った。そして,戦略組織の比較研究を行うため海外(シドニー他)に赴き,これまでの調査研究の総括とその発展に取り組んだ。その結果,時間軸を考慮に入れた場合と入れない場合の両面から検討すると,有効な戦略組織のあり方が一様でなく,変化が見られることが確認された。すなわち,近年の不透明で激変する環境下において組織は戦略転換とともに組織変革を余儀なくされるのである。そのため競争優位を確保できる戦略組織は,社会的責任メカニズムが組み込まれても,時間軸を超越するモデルとして有効であるとは限らない。ただし,こうした主張の正当性を高めるにはさらなる研究が必要である。本研究プロセスにおいて,本年の研究成果は,「組織ルーティン変化の影響要因」『早稲田商学』(413・414号),2007年,「セクハラ訴訟と組織コントロール」『経営判断ケースブック』商事法務,2008年,「明治時代の三菱」『明治に学ぶ企業倫理-資本主義の原点にCSRを探る-』生産性出版,2008年,などに結実している。さらに2008年秋までに出版予定の「コラボレーションを活かす経営組織」『コラボレーション組織の経営学』中央経済社,および「日本企業のCSR経営」『進展するCSR-企業と社会-』中央経済社,が印刷中である。以上から本年度の研究は,有効な戦略組織のあり方と社会的責任問題の関わりを解明でき,戦略論と組織論の架橋原理の探求を進めることができた。今後は,この成果を踏まえ,戦略論と組織論それぞれのロジックの融合による新たな戦略組織論として研究成果を発表する予定である。
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