研究概要 |
1.デジタル情報家電製品は価格下落スピードが速く,また製品市場が予測を超える速さでグローバルに拡大する。この厳しい時間条件に適合できない企業は,事業の継続自体が困難になる。しかし逆に,製品開発と量産立ち上げの迅速化,しかもそれをグローバルに展開する組織能力を発揮できる企業は,モジュラー型製品においても技術差異化戦略は有効である。この「時間軸の競争能力」の構築には,水平分業型ではなく統合型組織が適合的であり,その潜在力を意識的に開拓することが有効であることを,松下電器の統合型プラットフォームの開発過程を通じて確認した。2.半導体製造プロセスの性格と製造プロセス開発過程の特質に関する研究を行った。わが国半導体の国際競争力の弱さに関する通説は二つある。(1)設計と製造を企業内に統合するIDM型は非効率性だと指摘する議論、(2)半導体製造プロセスは工程間相互依存性の弱いモジュラー型工程アーキテクチャであり、しかも日本の装置メーカーがプロセスレシピ付き装置を海外に販売するので(装置の汎用性論)、半導体産業では資本力があれば容易にキャッチアップできる、以上である。以上の議論に関わり半導体企業の製造プロセス技術者へのヒアリングを通じ以下を確認した。(1)半導体プロセス開発には設計とプロセス開発技術者の緊密な調整を必要とし、それはIDM型企業の組織的優位性を示唆する。しかし、日本のIDM企業には組織内連携が放置され、設計か要素技術のいずれかの発言力が強く十分な相互調整を許容しない事例が多く、優位性を実現できていない。(2)半導体の各工程は通説とは逆に相互依存関係が極めて強い。「装置を購入して並べれば半導体の効率的生産は可能」という認識はプロセス開発現場の事実とはまったく合致しない。
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