研究概要 |
本研究の目的は,小売業態の国際移転に伴い,提供側原初の当該小売業態が受入国における移転・普及の過程で変容するメカニズムについて明確化することにあった。本研究には2つの課題があった。第1に,小売業態の国際移転に伴う変容を体系的に捉えるため,変容の過程に関する概念モデルを提示すること。第2に,アメリカから日本へ移転したスーパーマーケット変容を事例として取り上げ,その概念モデルに基づいて,日本におけるスーパーマーケット変容の過程と要因を整理することである。イノベーションの普及理論と異文化屈折理論を応用して提案された概念モデルにおける小売業態の変容には2つのステップが含まれている。最初は,小売業者が受入国の環境に適応するように小売業態の要素に対して変容操作を行なう段階。次は,パターン化された変容操作の組み合わせが小売業者間で普及する段階である。調査されたスーパーマーケットの日本への移転事例については,アメリカにおけるスーパーマーケットの成立の経緯,目本へのその導入,スーパーマーケット変容としての総合スーパーの誕生へと至る小売業者による変容操作とその要因,総合スーパーの小売業者間の普及とその要因が含まれている。総合スーパー誕生に向けた小売業者の変容操作を引き起こした要因として,消費ブーム,百貨店法,生鮮食品取り扱いの困難さ,スーパーマーケットやディスカウント・ハウスの同時移転などがあげられる。また,総合スーパーの普及については,百貨店のような大規模店を実現することによる正当性の確保があげられる。
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