研究概要 |
1.適切な会計処理である有税償却が平成9年3月期まで進まなかったのは,大藏省の基準が明確ではなかったからであることが明らかとなった。 2.銀行の平成10年3月期決算における貸倒償却・引当金の適正な金額を決定するための公正なる会計慣行があったと結論付けるのは難しいとの結論を得た。 3.足利銀行のケースの考察から,日本公認会計士協会の監督当局が金融庁であるため,金融検査と監査の乖離を解消するのは難しいこと力明らかとなった。 4.米国金融当局の『2006年共同方針書』は,1999年7月に金融当局と証券取引委員会(SEC)が公表した,『金融機関に対する規制当局共同書簡』の合意内容を確認したものであり,新たな見解は明らかにされていない。 5.日本公認会計士協会の公表・発出物は,金融再生プログラムという会計とは別次元の政府の動き,すなわち,銀行の貸倒引当金は「過小である」という政府の決め付けに,無批判に乗ったことが明らかとなった。 6.現行の金融検査マニュアル上貸倒引当金が「過大」になる余地が文言上存在するために,当局の裁量が大きくなるものと考えられる。 7.UFJグループの事例の考察から,金融庁の裁量で貸倒引当金の金額が決定されること,並びに,監査法人の監査は金融庁によって簡単に否定されることが明らかとなった。 8.繰延税金の会計処理に対する金融検査と監査の考察及び住専問題については今後の課題である。
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