研究課題
基盤研究(C)
本研究では、各国の障害者差別禁止法と国連・障害者権利条約を分析し、その中で「合理的配慮」の意義と実効性を検討した。第一に、2006年12月、国連第61回総会において、障害者権利条約全50条と選択議定書が採択されたが、障害者権利条約の内容と採択の意義を示し、「合理的配慮」概念について「平等と非差別」、「労働」、「教育」などの条項に関する議論を把握した。第二に、国連・障害者権利条約特別委員会に提出された「合理的配慮」に関する文書などをもとに、各国障害者差別禁止法における「合理的配慮」の概念を比較社会学的に検討した。この「合理的配慮」の概念は、アメリカの「障害をもつアメリカ人法」において本格的に障害者法制の中に導入された概念であり、その後、各国で成立していった障害者差別禁止法のなかにも導入されていった。「合理的配慮」の概念は、非差別原理のもとで、通常の教育や労働環境の中で障害者の権利を保障するための概念として意味をもつが、そこには、環境の修正に「過度の困難」が生ずるところでは免除されるという限定がつけられていた。したがって、「合理的配慮」の概念は、各国の障害者施策の歴史的到達や限界を反映するという性格をもっている。第三に、各国の障害者差別禁止法を収集しその特徴を分析した。2003年のスペイン、フランス、イタリアなどで障害者差別禁止法を収集・分析を行うとともに、アジア・太平洋地域では韓国の動向に注目して、障害者運動と政府の障害者差別禁止法の内容の比較検討を行った。以上をまとめて研究成果報告書を作成した。障害者権利条約の採択されたことを受け、世界各国で国内法の見直しと障害者差別禁止法などの成立が促されていくと考えられ、今後の障害者法制の動向の分析が課題として重要になるといえる。
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