研究課題
基盤研究(C)
本研究は、「社会にある資金・資本は、地域住民の意向にそった形で公益のために地域住民によってコiントロールされ得るのだろうか」という「市民社会型資本循環」の研究としてなされたのであるが、とりわけ(1)いかに市民は公益のために公の資金・資本をコントロールし得るのか、(2)市民がそのために体現し得るAuthority(公的団体)としていかなる仕組みが組み立てられえるのか、という点を明らかにすることとした。ごく最近の、先進諸国のローカルガバナンス国際比較研究(Denters & Lose 2005)、ネイバーフッドプランニング研究の成果(前山 2004)およびローカルイニシアチブの研究をレビューした後、第一部において、米国におけるレファレンダム(住民表決)とイニシアチブ(住民発案)の発達を後づけ、それを通じて、ローカルイニシアチブが「民主的ガバナンス」の有効なツールなってきていることを示した。つづく第二部において、ローカルイニシアチブの手法を通じて、シアトルモノレールプロジェクト(SMP)なる巨大プロジェクトが、「市民主導」(Citizen-initiated)公団として推進されるという未曾有の自体が進展したことを、論者自身のインタビュー実施調査データによって示した。その結果以下の成果が得られた。(1)SMPにあっては、「市民の手による公団」が、イニシアチブにより設置され、かつ同公団が市の助力なしに純粋的に市民評議会により運営されたこと、(2)SMPは、課税イニシアチブ(Levy Voting)を通じて、そのための約1900億円の座財源として「自動車使用税」を56万台の自動車所有者に賦課することに成功し(徴収はカウンティ政府を通じて)、かつ地域経済にとって1.3%の雇用増、2.12%の売上税増を見込んだこと、(3)他方、限界に関わることとして、「市民の手による公団」のための基盤と手続きは未成熟であり、市による敷設不許可という大きな障害を経ざるをえなかったこと、(4)社会的意味としては本ケースが、「市がゾーニングと予算をもつ」対「特定領域でプランニング権を得た市民公団」の図式を呈していたこと、の4点である。一言で言えば、ローカルイニシアチブ(Levy Voting)が、単なる投票行為・投票コントロールを超えて、「市民立公団」として自立した実施主体の設置を可能としたことを意味し、また、それはこの未曾有の状況ゆえに、アメリカでは、市政府VS市民自治にかかわる法務、管轄権問題として衝突が明らかになった瞬間と言える。
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