本研究は測定の反応性(reactivity)とその含意を既存文献のリビューと実験データの分析によって検討した。本研究は反応性が信頼性と妥当性の評価に及ぼす影響に焦点を絞った(報告書第1章)。この影響を検討する為、第2章では、キャリーオーバー効果による変数間の相関の変化を論じた。この現象の把握は方法論的困難を伴うが、この現象は信頼性・妥当性評価に大きな影響を及ぼす可能性がある。第3章では反応性が人格テストの内的一貫性に及ぼす影響が検討された。Knowlesの研究と本研究の追試は、幾つかの人格テスト(単一特性)において、項目信頼性(項目一合計相関)が各項目の出現順序と相関することを明らかにした。ここから本研究は内的一貫性の自己発生を指摘した。すなわち項目数の多い尺度ほど(ランダム誤差の相殺ではなく)項目間相関の上昇によって、内的一貫性が高くなる可能性がある。第4章では、反応性が予測妥当性に及ぼす影響が検討された。特に、実際の行動を基準としたときの意図の測定の予測妥当性が検討された。予測誤差の自己消去性に関するShermanの知見を再検討した結果、予測妥当性の自己発生が立証された。そして本研究の実験結果から、この種の現象が発生する条件が検討された。第5章(補論)では、キャリーオーバー効果の除去に用いられる緩衝項目の役割について論じた。終章では、信頼性・妥当性評価の諸方法の多くが自己矛盾を抱えていることが論じられた。それらの評価方法は反復測定を行う一方、それ特有の反応性の問題を軽視している。
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