研究概要 |
本研究では,地域社会における子育て支援の拠点の1つである児童館の子育て支援の課題を明らかにするために,2つの質問紙による調査を実施した。 1.乳幼児を持つ母親の子育て不安に影響を与える要因に関する調査 乳幼児をもつ母親を対象に子育てサポート,子育て不安,児童虐待的傾向,児童虐待的経験に関する調査を実施した。なお,項目反応理論を用いて,子育て不安項目等の検討を行い,被験者母数を算出した。その結果,ストレスが高く,虐待傾向があり,近所や友人とのつきあいが少なく,夫の精神的支えが少ない人ほど子育て不安が高いことがわかった。また,子育て不安と虐待的傾向との間にはかなりの相関が認められた,効果的な子育て支援をすすめていくための課題として,(1)子育て状況を測定する尺度の開発,(2)地域や家庭における子育て支援システムの構築,(3)子育て支援のための実践プログラムの開発が明らかになった。 2.地域社会における子育て支援の拠点としての児童館の活動効果に関する調査 3.市の児童館の子育て支援を利用している母親を対象に,子育て状況,児童館の子育て支援活動の利用状況とその活動評価を明らかした。その結果,地域によって子育て不安や児童館活動評価に違いがあった。また,児童館の利用状況の良い人ほど,児童館活動評価が高く,子育て不安が低いことがわかった.地域の実情にあった児童館の子育て支援活動を展開していくたための課題として,(1)児童館の子育て支援の実践評価尺度の作成,(2)児童館の子育て支援プログラムを創りだすための実践モデルの開発,(3)ソーシャルワーカーとしての児童館職員の役割の重要性が明らかになった。 今後の研究課題は,ソーシャルワーカーである児童館職員が質の高い子育て支援実践(EBP)を行うために,子育て支援プログラム創りのための研究開発マニュアルを作成し,児童館の子育て支援のための実践モデルのデザインと開発を試みることである。
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