研究概要 |
本研究の目的は、子どもが自己のネガティヴな感情をどのように認識し制御するのかについて、その社会化プロセスを明らかにすることである。日本とアメリカの4歳児とその親を対象に,以下の研究をおこなった。 研究1では、子どもの感情制御・心の理論・他者感情の理解・実行機能・認知能力などを、子どもに課題を与えて行動を観察することによって測定した。ネガティヴな感情状況として,「Boring(封筒)課題」・「Prize課題」・「コンピュータ課題」を子どもに提示して,ビデオカメラで撮影し,子どもの行動(言葉,表情,身体の動き)を評定した。研究2では、親の養育態度・親の情動特性・子どもの情動特性・子どもの気質・子どもの行動特性などを、親を対象として質問紙調査を実施して測定した。 感情制御の媒介要因について日本とアメリカのデータを比較検討したところ、心の理論・他者感情の理解・子どもの情動特性・子どもの気質・子どもの行動特性・親の情動特性・親の養育態度で,文化差が見られた。日本の子どもはアメリカの子どもよりも,心の理論の一部の課題の得点が低く,他者感情の理解の感情ラベリング課題のExpressive等の得点が低く,気分の変化が大きく,気質の怒りや欲求不満が低く,内在化問題行動が高かった。また、日本の親はアメリカの親よりも、気分の変化が大きく,感情の同定及び感情表現の得点が低く,他者の気持ちに誘導するあるいは子どもの行動の問題点を説明する養育態度が多かった。 また,感情制御の個人間要因について検討したところ,日本の子どもでは,感情制御と実行機能及び気質(知覚的敏感さ,注意の移行,なだまりやすさ,抑制的制御)との関連が示唆された。今後はさらに詳細な分析を進め、感情制御の社会化プロセスについて総合的に考察していく予定である。
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