研究概要 |
心理学において盛んに用いられている評定尺度法や選択判断は,様々な心理学的尺度化法で暗黙の内に仮定されているように,心理学的連続体上の心理値を単純にピックアップするというものではなく,むしろ時間変動を伴った構成的な意思決定プロセスの結果と考えるべきである.尺度評定や選択判断の「プロセスモデル」を構築するために,反応時間や反応過程に注目したモデル化を試みた. A)モデルの整理 心理学的プロセスモデルの観点から評定・選択判断のプロセスを整理・概観した.まもなく展望論文として完成し投稿する予定である. B)独自モデルの提案 「ポワッソン差異モデル」を発展させ,定量的・定性的性質を整理し諸モデルとの対比を行い,またデータとの対応がとれるようにした.数理的な新展開としてジャンプ型確率過程(レヴィ過程)との関係が見えてきたのが大きな成果であった.また,「選択肢付き穴埋め問題」に対する新しいモデルを構築することができた. C)パラメーター推定問題 理論も大切であるが,やはり実際のデータ解析が手軽に出来た方が良いだろう.そこでパラメーター推定プログラムを作成し,広く使われているアプリケーション(エクセル)上で動作可能になるようにした.またEMアルゴリズムを用いた「選択肢付き穴埋め問題」に対する推定プログラムも完成した. D)実験的研究 A),B),C)の結果をふまえて,データと理論の一致度を検討し,また判断過程の分析を行った.また椎名(2004)で提案された「動的評定尺度」は最終的な評定値・評定時間のみならず,評定中の判断の変動過程を可視化しようとするものであるが,「社会的態度,性格特性」等に対して中規模のデータを収集し興味深い結果を得ることができた.
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