研究概要 |
本研究では,楽観性を「将来を肯定的に期待し,望ましくない出来事を外在的,特異的,一時的に帰属させる姿勢」ととらえ,幼児期の楽観性における心理的ストレスに対する弾力性と非現実性を明確化することを目的とした。調査対象は,保護者から調査協力の承諾を得た4歳〜5歳の幼児171名と,小学校2年生児童114名(対照群)である。幼児と児童には,日常生活における成功場面と失敗場面での帰属スタイルと感情反応を調査し,幼稚園・小学校で唾液中αアミラーゼの測定を同一日に複数行った。また,幼児と児童の保護者には,子どもの帰属スタイルについて質問紙調査を行った。調査の結果,幼児には,自己の成功や失敗を内在的に帰属させる子どもが多いが,全体的一特異的,永続的一一時的という側面では,小学校2年生よりも楽観的な帰属スタイルを示すことが示された。帰属スタイルから楽観性が高いとみなされた幼児の中には,楽観性が低い子どもよりも,成功場面・失敗場面でポジティブな感情を回答する子どもが多く含まれていた。これらの子どもの唾液中αアミラーゼは,楽観性が高く成功場面でポジティブ,失敗場面でネガティブな感情を回答した子どもよりも増加する傾向を示した。楽観性は高いが失敗場面での陰性情動を回答せず生理的なストレスが増加する傾向を示したことから,これらの子どもの楽観性には非現実的な側面が強いと考えられる。保護者による楽観性評定では,子どもの年齢による差が認められた。すなわち,小学校2年生では4歳,5歳よりも評定値が低かった。一方,子ども対象の調査によって楽観性が低いとみなされた子どもの中で,失敗場面でもポジティブな感情を回答した子どもの保護者は,成功場面でポジティブ,失敗場面でネガティブな感情を回答した子どもの保護者よりも,子どもの楽観性を高く評定していた。この傾向は幼児,児童の保護者に同様に認められた。保護者自身の楽観性と子どもの楽観性の関連について検討することが今後の課題である。
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