研究概要 |
本研究期間において,「教育的スロイド」という理念と方法を発展させたオットー・ソロモンに焦点をあて,1870年代から1890年代までの,サロモンのスロイド教育論の形成・展開過程を,とりわけ彼のモデル・シリーズを中心に解明してきた。 まず,先行研究の状況に鑑みて『ネース・スロイド教育時報』など原史料にもとづいてオットー・サロモンの全生涯にわたった数多くのスロイド教材の集成の発展過程を関連する事実経過を詳細に追い,その内容を年表の形で整理し,それぞれの段階ごとの特徴について明らかにした。 そのなかで課題として浮かび上がってきたことは,オットーサロモンのスロイド教育に関する主張の特徴を解明するには,「モデル集成」や「モデル・シリーズ」を調査,整理,分析するだけでは不十分で,少なくとも彼自身がスロイド教育に関する主張の要点をテーゼのような形式で述べた文書の内容を,彼が生きた時代の,スウェーデンの民衆教育制度の発展状況との関連で,詳細に分析する課題が浮かび上がってきた。 そこで,次に,(1)主として「民衆教育令」直前の民衆教育の実態との関連において「民衆教育令」の意義を解明し,(2)「民衆教育令」制定直後の1840〜50年代に展開されたスウェーデンにおける民衆学校制度の形成過程の実情を解明し,民衆教育令体制の若干の特を摘出した。
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