研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、戦後の実践家・理論家により語られ記録された美術教育評価の観点の特徴を探ることにあり、公的な教育評価の観点とともに、資質・能力観や指導観に通底しそれを代弁するキーワード・概念用語を取り入れ、それぞれの特徴と関連性・連鎖、断絶等の諸相を描くことであった。方法として、戦後発刊された雑誌『教育美術』『美育文化』の評価観に関連する記事を取り上げ当時の美術教育をめぐる評価の観点として検討した。なお、本研究では1980年代の『教育美術』に記述された用語や言説を、以下の座談会・討論会・研究会・論文・実践報告等の中から取り上げた。成果として、『教育美術』では、よい絵・わるい絵、美的表現、造形力、技能、美学的観点、作り出す喜び、確かな表現、自己表現、原点性、情操、手の働き、たくましい創造力、地域性、芸術性、基礎学力、豊かな人間性、遊び性、自分らしさ、身に付く、ほほえみ、生き生き、のびのび、生きる力、自律性、空間認識力、想い、自己実現、リアリティー、という評価基準など、多様な観点を見出した。結論として、描き出されたキーワード・概念用語は、次の文脈の中で展開され主張されてきたといえる。(1)学校の規制に対する自由主義に基づいた抑圧解放と進歩主義的美術教育の思潮、(2)現代美術運動とその概念の学校美術への応用・導入、(3)創造・想像力・イメージと内的世界の構築、(4)教育工学・行動主義・認知心理学からのアプローチ、(5)意欲・知識理解、創造性、基礎・基本等を含めた学力論争、(6)子どもの本姓と遊びの役割の主張。しかし、本研究の成果は、次の二点から課題が残り、継続研究が期待される。(1)対象雑誌の評価関連記事の分析論文数が当初目的の500篇に達しなかったこと。(2)抽出された用語等は、「学校美術に対して期待されたもの」という観点から、美術教育思想史として考察される必要があること。
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2006 Fall International Design Conference, Proceedings, The Korean Society of Design Culture.