研究概要 |
Authentic Assessmentは,「真正,本物」という文脈において,カリキュラム,教授,評価の一体化を意味する。本研究はリアルな社会の現実に,どのように社会科授業が関与するのか,すべきなのかを問題意識として進めてきた。パフォーマンス評価,ポートフォリオ評価,目標準拠評価の理論を,授業の実際に反映させる上で,ウィギンズの"Backward Design"との関連を見出した。到達すべき目標を明らかにし,カリキュラム,授業を設計する。あらかじめ目標に照らして評価可能なものを示しておく。拙稿「思考支援型単元プラン作成による授業設計力の育成」では,学習者の理解を深めるために,どのような本質的な問いを作成するのかを核として,単元プランやカリキュラムを構成し,それぞれの目標に沿って評価規準(ルーブリック)を作成するよう示したものである。現状の学校現場における臨床的な評価改善には,外国人労働者を扱う授業の生徒レポートの分析から授業事実の確定を行う学習評価のあり方を示した。また,教師作成評価問題の評価の実際を吟味し,「社会科目標準拠評価におけるモデレーションによる妥当性・信頼性の確保」を発表した。授業改善では,「価値的思考力・判断力を問う授業とテスト」を,中学校公民的分野「民主政治と政治参加」を事例に,パフォーマンス課題による問題作成方略を示した。本研究の最終目標とした社会科学習評価の体系的な枠組みを示すにはまだ検討の余地が残されるが,社会科学習のPDCAサイクルを研究することが,Authentic Assessment概念の文脈に合致する新たな課題として萌芽した。
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