| 研究概要 |
本研究の目的は,中等教育における道徳教育の指導内容・指導方法を探ることにある。本研究の特徴は,中学校教育と高等学校教育を一体のものとして道徳教育をとらえたこと,大学生対象の意識調査や高等学校への調査訪問に基づく実証的研究であること,学校段階間のアーティキュレーションの視点から大学における教員養成について言及したこと,にある。
本研究によって明らかとなったことは,次のとおりである。
1.中学校の道徳教育においては,小学校から中学校への移行時における青年期特有の非連続性に着目すべきである。中学生・高校生は,ともに青年期段階にあることから,中学校と高等学校の道徳教育は一体のものとして系統的に指導内容を構築する必要がある。
2.高等学校の道徳教育は,規範意識の高揚や社会的自立の促進など,今日的課題に対応する必要がある。また,高等学校教育には,学校教育全体で行われる道徳教育を統合するコアとなる時間の設定が必要である。中学生・高校生にとって,自己自身の体験に基づいて,自己の生き方について思索を深めていくことが重要である。
3.高等学校「倫理」の指導については,中学校の道徳教育との連続性,哲学的な見方や考え方に関する基礎的知識の修得,今日の倫理的課題に対する主体的追究など,多面的に検討すべきである。
4.教員養成においては,人間存在や人間の成長についての理解を深めさせることが重要である。人間としてどう生きるべきかという問いかけを促すような仕組みを,初等中等教育から高等教育に至るまで一貫したものとすることについて検討すべきである。
|
