研究概要 |
いわゆるジャパニメーションと呼ばれる日本のアニメーションには、世界でも類をみない特色がある。極めて平面的でありながら、なおかつヒトの色覚を巧妙に生かした色彩の用いられ方である。 かつて浮世絵が印象派の画家たちを驚かせたように、日本のアニメーションは今尚、欧米の視知覚様式とは異なったものを持ち、世界的な美術市場へ影響を与えている。 日本の浮世絵,絵巻,漫画,アニメーション等に共通する視知覚様式の独特の点として ・消失点が極端に高い点にある,あるいは消失点がいくつか別に画面中の存在する極端な遠近法 ・中景の厚みに相当する陰影の喪失した色面構成 ・記号化された顔面の諸器官の形による感情伝達,正面からにらみつけた眼,突き出された手の平を極端に大きく描くなどの正面性の高い表現方法 ・降り注ぐ雨や雪、爆発,閃光,風に翻る服のような動きを紋様化あるいはパターン化して形つくっていく表現 があげられる。 平成18年度に行った研究では、アニメーションの色彩設計がどのようにあるべきかについて問題提起し、定義した。一人のキャラクターに2種類の色を割り振ると見る側のキャラクターの同定が崩れてしまう。色の恒常性と形の恒常性を動画の中でどのように保つかが重要になる。ここでは、平成18年夏に公開された「時をかける少女」(細田守監督貞本義行キャラクターデザイン)作品を取り上げてその特徴を述べた。 1.影の表現がないこと 2.必要最低限の線でなされ、キャラクターを特徴づける特異な髪型や装身具などがなされてないこと。 3.特異な色設定によって特徴づけられていないこと。 静止した状態では目立つとはいえないたいへん地味なキャラクターである。しかし、いったん動画になると鞄をかける位置、ブラウスの袖の揺れなどが特徴的に表現され、キャラクターが動画によって同定するという全く新しい技法が生み出されている。
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