本研究は、外来脳卒中後遺症者(以下患者とする)とその担当理学療法士(以下担当PTとする)が一緒に目標を設定し、目標を共有化するための目標設定方法を提案することを目的とした。 初めに、患者とその担当PTが認識している外来理学療法目標の特徴と相違を調査した。方法は、外来理学療法を受けている患者と担当PTの30組のペアを対象に、それぞれが認識している外来理学療法目標について、因子分析法の一つであるQ技法にて分析した。その結果、患者が認識している目標は主に運動機能改善と歩行改善、担当PTが認識している目標は主に生活体力向上と歩行改善であった。両者が認識している目標は必ずしも一致しておらず、一緒に目標設定し目標を共有化するためのツールとして、目標設定方法を開発する必要性が示された。 次いで、患者と担当PTが一緒に目標設定し、目標を共有化するための目標設定方法を検討した。まず、文献レビューにより、既存の目標設定方法を分析した。それに基づき、退院後の脳卒中後遺症者に適した目標設定方法を考案した。考案された方法は、チェックリストを用いた書式対話型の目標設定方法で、3つの書式からなる(目標チェックリスト、目標記録シート、目標達成度評価シート)。本方法を外来患者3名に適用したところ、患者の生活に即した目標を設定し、担当PTと目標を共有することができた。また、目標達成に向けた患者の意欲向上が認められた。これらより、考案された目標設定方法を用いることによって、目標、理学療法介入、評価が一貫したものとなり、理学療法をはじめとするリハビリテーション活動の向上に資する方法であることが示唆された。今後、多数の対象者による効果検証が必要である。また、外来理学療法のみならず、訪問や老人保健施設などにおけるリハビリテーション活動への適用や、多職種間での目標の共有について更なる研究が必要である。
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