研究概要 |
全国の高等専門学校の常勤教員全員に対して,発達障害に関するアンケート調査を実行した(回収率46%)。その結果,LD、ADHDの認知度は38%、39%、高機能自閉症、アスペルガー症候群の認知率は22%、19%という状態であり,発達障害に関する基礎知識が不足している状況であることが明らかとなった。 しかし、高専教員が学生を観察したときの状態像として「授業態度は良好だが,成績が伸びない学生」は2.9%、「レポート等の提出が著しく滞る学生」は2.6%等という我々の経験値とは大きく矛盾しない結果が得られている。また、単項目の設問を単純合計した結果ではあるが,8.2%の学生に発達障害に起因する学校生活の蹟きが見受けられるという結果は,2002年の文科省の調査結果6.3%とも矛盾はしない。 また,既に動きのある高専を視察した結果,「特別支援教育推進室」「障害学生就学支援プロジェクト」等という学内のシステム構築を行っているという段階であった。それらの高専との情報交換から,高専全体として,.「発達障害」という概念の教職員への啓蒙,2.対応部署の確認,3.全国高専間の情報交換,が最優先されるべき問題であろうことがわかった。 個々の高専の問題点としては,全ての教職員が「特別支援教育の理念」を正しく理解することが急務であることがわかった。また,そのためには医療・療育・教育など様々な立場の講師による複数回の講演会が効果的であることが見出せた。この問題点をクリアした後には,1.単位認定・試験のあり方,2.保護者との連携のあり方,3.外部機関との連携のあり方,4.進学・就労支援のあり方といった具体的な問題点について検討してゆかねばならないことを確認した。
|