研究概要 |
Siegel保型形式の次元公式に関する新谷の結果(J.Fac.Sci.Univ.Tokyo, 22 (1975), 25-65)の背後にある原理を理解するために,一般の半単純実Lie群の離散系列表現に付随する球関数のFourier変換,Poisson和公式の正当化,及びFourier変換して得られる関数の非零集合の決定をめざして研究を進めた結果,以下の成果を得た;1)Harish-Chandraによる離散系列表現の行列係数の大きさの評価式と,Jordan三重系を用いた有界実対称領域の記述を利用して,問題の離散系列表現のHarish-ChandraパラメータがWeyl部屋の壁から充分離れていれば(どの程度離れていればよいかも個々の場合には記述できる)Fourier変換及びPoisson和公式が正当化される,2)古典群の正則離散系列表現に関しては,Godementの構成法を利用して,行列係数のFourier変換を具体的に書き下すことができた.結果として,その非零集合がわかるが,それは自然な放物的部分群の冪零部分の中心のLevi部分が作用してできる概均質ベクトル空間の開軌道の実成分の連結細分となる.この現象は一般の離散系列表現に対して同様に成り立つものと予想される.以上の研究は未だ研究途上のものであり,次年度の科学研究費補助金の対象となる研究で引き続き研究を進める予定である.以上の研究成果に加えて、i)Jordan三重系の一般論を含めてJordan三重系による対称空間の記述及びWolf-Koranyiの理論の複素有界対称領域から実有界対称領域への一般化、ならびにそれを用いたCartan Seminar 1957/58の結果の近代化を含む総合報告の執筆、ii)保型形式とユニタリ表現の教科書「保型形式とユニタリ表現」の執筆(数学書房より出版よてい)、iii)局所コンパクト群の表現論の教科書「表現論の小道(仮題)」の執筆(岩波書店より出版予定)を行った.Iii)は引き続いて執筆を予定している近代的な保型形式論の教科書「保型形式論序説(仮題)」のために局所コンパクト群の表現論の基礎を提供するためのものである.
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