研究概要 |
研究分担者の永友清和氏および名古屋大学の土屋昭博氏と共同で研究を行い,頂点作用素代数の普遍展開環の性質を抽象化した公理系を満たす代数の概念および有限性条件を定式化し,そのような代数の上のある種の加群の圏が有限次元代数の加群の圏と森田同値になることを証明した。特に,Zhuの有限性条件を満たす頂点作用素代数の普遍展開環の場合には、頂点作用素代数の上の加群の圏が有限次元代数の上の加群の圏と同値であることの証明が得られる。 次に,頂点作用素代数に附随するカレントLie代数について考察を進め,そこで用いられる平坦接続が座標によらないことの新解釈およびLie代数の構造が座標不変であることの簡明な証明を得た。以上に基づいて,有限性を持つ頂点作用素代数の上の加群の有限列を考え,それらを点付きRiemann面ないし安定曲線の族に附随させて得られる余真空の空間を土屋・上野・山田の方法に従って構成し,その性質のうちのいくつかを調べて一定の結論を得た。そのほか,次数付きとは限らないがフィルター付きであるような頂点代数についても,その普遍展開環を考える自然な枠組みを考案した。 その他,研究協力者のMarkus Rosellen氏との議論により,Zhu代数の概念をより一般的な枠組みで理解する方法を得た。また,カリフォルニア大学サンタクルズ校のC.-Y.Dong教授との議論により,頂点作用素代数の高次Zhu代数の表現からVerma型の表現を誘導するような加群と普遍展開環との関係を明らかにした。さらに,研究分担者の安部利之氏やハーバード大学のJohn Duncan氏との議論により,有理的でない頂点作用素代数の例を構成する方法についての一定の知見を得た。
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