研究概要 |
研究期間の前半では,単純群のなかに差集合が存在するかどうかという問題に関して,最小の単純群である5次交代群を考察した.そしてそれに含まれる差集合を完全に分類して,"5次交代群には差集合が同型を除き丁度2つあっていずれもアフィン型相対差集合である"ことを示した.また,2面体群の中には非自明な差集合が存在しないという予想を少し広い相対差集合の条件の下で研究して半正則型とアフィン型は自明なものに限ることを示した.さらに可換p-群での半正則相対差集合とp-ランクの研究の過程でZp^2×Zp^2には非自明な半正則相対差集合が存在しないことがMa-Schmidtにより1994年頃予想されていたが,指標を利用することにより,これが正しいことを示すことができた.研究期間の後半では,奇数nに関して位数n^2-1のアーベル群Gにおけるアフィン差集合Dと乗数・群拡大の関係の研究を行った.群Gを禁止群Nによる剰余群H=G/Nに関するNの拡大であると見ると因子団が対応するが,この因子団の2つのパラメタの一方だけをすべてのHの元を渡らせて積を作ることで1変数の関数g:H→Nが得られる.この関数がDの乗数mとの関連でよい性質,例えばg(σ^m)=g(σ)^mやg(σ)=g(σ^<-1>)を持つ.これを利用して乗数mに対してmodo(g(σ))でのmの位数はmodo(σ)でのmの位数の2倍以下であることを見いだした.これを用いることによりmod exp(N)でのmの位数とmod exp(H)でのmの位数との関係を示す結果として"位数n^2-1のアーベル群Gの位数n-1の部分群Nに関するアフィン差集合が存在すればnの約数mに対してmod exp(N)でのmの位数はmod exp(H)でのmの位数の2倍以下である"ことを示した.この定理を用いて"アフィン差集合の素数べき予想"を10万以下のnについてチェックすると155個を除いた場合に予想の正しさを直ちにチェックできて,予想が一般的に正しいことにさらに強い根拠を与えることができた.
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