研究概要 |
kを基礎体とし,Aをkを含む体K上のクロスKホップ代数,すなわちアンチポードを持つクロスK双代数とする.Aは左K空間として有限次で,さらにK余代数として分裂であるとする.このとき,Aの右K空間としての次元は左K空間としての次元と一致することが得られた.RがKを対称的商代数Qの中心に持つ素代数で,AがQに連続かつ外部的に作用するとき,Aが零でない左積分を持てば,ホップガロア対応と同様に,Rの不変元からなる部分代数を含むRの有理的完備部分代数は,ある対応写像によってAの右余イデアル部分代数と対応する.Aの群的元の作用でRが安定であれば,この対応写像は単射であることが示された.群的元の作用での安定性の条件を仮定せずに単射であることを示すことが今後の課題となる.A^*をAからKへの右K写像の全体とする.Aの任意の右余イデアル部分代数Bが零でない左積分を持ち,さらに,Bが左A^*加群としてBの左積分で生成されていれば,対応写像の全射性も成立する.従って,Bの左積分についての上記性質の検証が今後の課題となる. ホップ代数の環への作用に関する新たな特徴付けへの応用については,Hが素代数Rに外部的に作用する体k上の有限次分裂ホップ代数のとき,Hが群環である場合の結果の一般化のための次の2つの問題を具体的な例で検証した. 1.RのHによる不変部分代数を含む部分代数の自己同型写像で,不変部分代数を固定するものはRの自己同型写像に拡張するか. 2.Rの対称的商代数の中心がkと一致する場合,Hの正規右余イデアル部分代数Iによる商ホップ代数をH'とするとき,RのIによる不変部分代数へのH'の作用は外部的か. 検証した例ではこれらの問題については肯定的な答を得たが,一般的にこれらの問題が肯定的な答を持つか,あるいは反例が存在するかについては今後の課題となる.
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