研究概要 |
本研究は,Borsuk-Ulam型定理を変換群論的観点から研究し,一般化されたBorsuk-Ulam型定理を定式化し,証明することを目的とするものであった.古典的なBorsuk-Ulamの定理とは「n次元球面からn次元ユークリッド空間への連続写像は,対蹠的一致点をもつ」という定理であるが,これは「C_2自由作用をもつn次元球面から(n-1)次元球面への同変写像が存在しない」と言い換えられる.このような観点からは,Borsuk-Ulam型定理は同変写像または等変写像の非存在性の問題と捉えられ,その一般化の研究が可能となった. 結果として,同変写像の写像度,同変コホモロジー指数等の不変量と同変写像との関係が明らかとなり,それらを用いて,同変写像に関するBorsuk-Ulam型定理の一般化を得た.特に,球面に限らないある種の同変多様体,たとえば基本アーベルp群の自由作用をもつStiefe1多様体についてもBorsuk-Ulam型定理が成立することが示された.さらに,等変写像に関する種々のBorsuk-Ulam型定理,たとえば有限群の自由作用をもつホモロジー球面から表現球面への等変写像が存在すればBorsuk-Ulam型不等式が成り立つことが示された.このようなBorsuk-Ulam型不等式は様々な応用の可能性が期待されるものである. つぎに,同変(等変)写像の存在問題,すなわちBorsuk-Ulam型定理の逆を考察した.同変障害理論から古典的なQrsuk-Ulamの定理を含むいくつかのBorsuk-Ulam型定理について,その逆も成立することが判明した.このような観点からの存在問題の考察は,本研究独自のものであり,Borsuk-Ulam型定理の研究に新たな視点を与えたといえる.また,これらの研究から等変写像の分類問題や多重写像度などの新たな研究課題も派生し,今後の研究の発展が期待される.
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