研究概要 |
平成17年度は主としてラベル付き配置空間の群完備化に関する研究を行い,「ラベルの空間が位相アーベル半群の部分集合であるとき,それに対応するラベル付き配置空間から,ラベルの空間を元のラベル達の差の形に表されるラベル全体に拡張して得られるラベル付き配置空間への自然な写像は群完備化写像である」ことを証明することに成功した。さらに,この命題の一つの応用として,整数のなす自由加群の任意の有限部分集合Mと空間Xのスマッシュ積をラベルとするラベル付き配置空間の群完備化はXの安定ホモトピー型QXに同値であることを示した。これは,「正および負の電荷を持つ粒子」("positive and negative particles")の空間に関するCarusoの結果を大幅に一般化するものとなっている。 平成18年度における最大の成果は,一般ホモロジーおよび一般コホモロジーを、従来から用いられてきたスペクトラムではなく,連続関手を用いて構成する方法を確立したことである。これにより,応用上重要な役割を果たす多くの理論を統一的に,しかもより幾何学的に取り扱うことが可能となり,幾何学的応用の可能性が大いに拡がることが期待できる。さらに,この方法は同変理論の構成に極めて適しており,実際,この方法を奥山が導入した『区間の配置空間』の理論と組み合わせることによって,少なくとも有限変換群の場合には,ラベル付き配置空間を用いて同変ホモロジーを定義することが可能であることを示すことができた。したがって,今後の中心的課題は,以上の構成を一般のコンパクトリー群が作用する場合に拡張することとなる。この点に関しても,有限点集合の代わりに多様体の配置を用いる新たな理論の構成に向けて,幾つかの重要な知見を得ることができた。 一方,ラベル付き配置空間の幾何学的応用としては,山口を中心として正則写像の空間の位相に関する研究を展開した。このテーマはSegalの研究に端を発し,ラベル付き配置空間の概念を生む契機となったものであるが,その思想を徹底的に推し進めることにより,正則写像の空間のホモトピー型のより詳細な研究が可能となった
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