研究概要 |
本研究では,平成17年〜19年の期間においてケーラー・ファイブレーションの微分幾何学のフィンスラー幾何学への応用について研究した。主な研究テーマは(1)複素解析幾何学の立場からの研究(2)フィンスラー幾何学におけるWeil-Peterssonタイプの計量の研究(3)複素構造と複素フィンスラー計量の関係に関する研究であった。(1)及び(3)についてはある程度の研究成果は得られた。(2)については未解決な部分もある。 コンパクトなケーラー多様体上の正則ベクトル束Eの射影化束の全空間P(E)もコンパクトなケーラー多様体になることが知られている。このP(E)上のケーラー計量はEの強擬凸な複素フィンスラー計量を定めることが示される。ケーラー多様体P(E)の幾何学は複素フィンスラー幾何学であり,その研究によりEのamplenessやEの射影的平坦性を特徴付けることができた。また特にEが底空間の正則接束TMの場合には,複素フィンスラー計量がケーラーであることを,Chern-Finsler接続を用いて特徴付けることができた。 複素フィンスラー幾何学に関して得られた研究成果については,国際学会(ハンガリー・2005,札幌・2006,仙台・2007)において報告し,2編の学術論文を出版した。また今回の研究過程で得られたフィンスラー接続の双対接続の研究結果の一部についても国際学会(ハンガリー・2007)において報告し,その内容については"Dual connections in Finsler geometry"として学術雑誌Acta Math.Acad.Paedagog.Nyhazi.(N.S.)に掲載予定である。
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