研究概要 |
この研究は、本来、バロトロピックな状態方程式のもとでの球対称オイラー・ボアッソン方程式で記述される気体星の運動において、平衡解が断熱指数gammaが4/3より大きいとき、非線型安定であることを証明しようという問題から生じたものであり、この平衡解の周りに時間周期解が現れるであろう、という予想の元に研究を始めたものである。 初年度においては、まず、問題の線型近似方程式をくわしく分析し、そのスペクトル解析をおこなった。結果として、線型近似方程式はSturm-Liouville型の2階方程式になり、係数は真空と接点において特異となるが、スペクトルは離散固有値からなり、固有関数は適当なHilbert空間における完全正規直交系となることを確かめた。これは非線型解析のためには確実な出発点となった。 第2年度においては、まず、問題の焦点を明確にするため、定数重力下での気体の1次元運動について考察し、平衡解からのずれについての線形近似方程式がベッセル函数であらわされる周期解をもつことを示した。さらに非線型問題については、境界をこめて滑らかな時間周期解がもつある種の性質をあきらかにした。 問題は真空と接する自由境界問題となるため、理論的に困難が大きいので、つぎに、重力のない1次元運動を考察した。平衡解は密度定数であるが、ずれの満たす方程式は、準線型波動方程式となる。境界もこめて滑らかな時間周期解は存在しないことを証明した。準線型波動方程式の時間周期解については、Greenberg, Ruskalらによるきわめて特殊なばあいの考察はあるが、気体の運動から現れるような方程式については、まったく研究結果がない。しかし、弱解については、半線型方程式についての、Rabinowitz, Brezis, Coron, Nirenberg, Craig, Wayne, Betti, Bolleらの結果を拡張して、周期解の存在が証明できる可能性がある。この方向での研究について問題の所在を明らかにすることができた。
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