研究概要 |
本研究において,量子群の理論に関連したq-変形調和振動子のヒルベルト空間上への非有界作用素表現の解析および量子環のwell-behavedな非有界表現の存在に関した基礎研究を行った.特に,q-変形調和振動子に関して次のような進展が得られた.1961年にV.Bargmannにより1次元量子調和振動子を規定する生成作用素が,Segal-Bargmann空間上の独立変数を掛ける積作用素にユニタリ同値になることが示された.この結果は生成作用素が標準の正規作用素に拡大されることを意味する.近年,数理物理学の分野で多様なq-変形調和振動子の研究が成されている.その中の1つに関係式xx^*-qx^*x=1(ただし、qは1でない正数)で記述されるものがある.本研究では,Bargmannによる結果を動機として,この振動子を規定するx^*がヒルベルト空間上の作用素としてより広い空間で既知の作用素に拡大されるかを調べた.そのために,ヒルベルト空間上の稠密な定義域を持つ作用素に対して「q-正定値」なる概念を導入した.上記のq-変形調和振動子を規定する稠密な定義域を持つq-生成作用素x^*は,この条件(正確に,q^<-1>-正定値条件)を満たす.本研究において,「稠密な定義域を持ち,その定義域を不変にする作用素がq-正定値条件を満たすならば,q-formally正規作用素に拡大される」を示すことが出来た.この結果でq=1となる場合を有界作用素に適用させると,有界作用素の範疇で広く知られているBram-Halmosの定理が得られる.さらに,上記において述べたq-変形調和振動子を規定するq-生成作用素は,定義域に関する自然な条件の下,q-正規作用素と性質が極めて近いq-formally正規作用素に拡大されることがこの結果より導かれた.
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