研究概要 |
1.複素Ginzburg-Landau方程式について得られた結果は、有界領域上の初期境界値問題で、初期値をLebesgue空間L^p(p>2)から取った場合を論じたもので,その系として初期値をSobolev空間H^1から取ったGinibre-Velo(1997)の結果が再現できた.しかもGinibre-Veloは触れていない初期値をH^m(mは自然数)から取った場合には非線形項の冪の指数の許容範囲がさらに広がることも示せた.この有界領域の場合をまず国際会議のrefereed proceedingsに投稿した(5月半ばに掲載決定の通知があった).非有界領域の場合は初期値をL^2から取った場合に用意していたpreprintの議論が生きてくるので,初期値をL^2とL^pの共通部分から取った結果としてこのpreprintを再生させることになりそうである.いずれの場合も初期値に対する解の平滑化作用も示されており,これらの結果は,ほぼ最終的といっていい段階に達しているように感じられる.関連する話題として,複素Ginzburg-Landau方程式の定常問題についても考察した. 2.一昨年秋に,報告者による二編の論文(1984,1996)を引用する論文G.Metafune,J.Pruess,A.Rhandi,R.Schnaubelt,L^P-regularity for elliptic operators with unbounded coefficients, Advances in Differential Equations 10 (2005), 1131-1164を見つけたことで,古い記憶がよみがえり,故加藤敏夫先生の論文T.Kato,Nonselfadjoint Schroedinger operators with singular first-order coefficients,Proceedings of the Royal Society of Edinburgh 96 A (1984), 323-329を思い出した.ヨーロッパ勢が4人がかりでやっているのに習って,こちらもまず複素Ginzburg-Landau方程式での協力者である横田智巳に参入を呼びかけ,自身の1980年代の論文での考察を生かして,加藤先生ご自身が上記論文中で述べられている改良の可能性を検討した結果,新しい十分条件を与えることができた. 3.N次元空間の有界領域でLaplacianに対する固有値問題を考える.n番目の固有値に対応する固有関数を(e-n)(x)で表す.そのとき絶対値|(e_n)(x)|がn番目の固有値のN/4乗の定数倍で上から抑えられるという結果が示せた.これはSobolev空間に属する関数の絶対値をSobolev空間のノルムで評価する問題(論文は現在投稿中)の副産物である.ごく最近になって吉川敦,関数解析の基礎,近代科学社,1990,黒田成俊,量子物理の数理,岩波講座応用数学,岩波書店,ユ994(単行本化,2007)で扱われている1次元(N=1)の(量子力学的)調和振動子の場合のn番目の固有値2n+1に対応する固有関数の評価に固有値+1=2(n+1)の1/4乗が現れることに気が付いた.こちらは非有界領域での問題ではあるが,共通の冪N/4の出現に両者のつながりが見て取れる.
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