研究概要 |
平成17年度の研究は,再生核となるグリーン関数を各種境界条件の下で構成し,各種境界値問題とヒルベルト空間との対応関係を調べ,ソボレフ不等式の最良定数計算への応用を中心に研究を遂行し以下の研究成果を得た.グリーン関数があるヒルベルト空間の再生核になることを発見した.この事実に基づいて,ソボレフ不等式の最良定数および最良関数をグリーン関数の性質,特に対角線値の情報を詳細に調べることによって,計算することに成功した.具体的には,糸のたわみの2点境界値問題に対するディリクレ型,ノイマン型,周期境界条件に対応するソボレフ不等式の最良定数を計算した.特にディリクレ型境界条件でバネ定数に相当する定数が固有値の負の値に一致する場合は,ある可解条件と直交性条件を付加し対象直交化法と呼ばれる方法で一般化グリーン関数を構成することができ,再生核と対応するグリーン関数を構成することができた.また,半空間の棒のたわみに対応する問題においては糸のたわみ問題同様,グリーン関数が存在しない特殊な場合においても一般化グリーン関数を構成し再生核との対応付けに成功した.これらの結果は,カナダで行われた国際会議International Workshop on Differential Equations and Dynamical Systemsにて成果報告を行った. 平成18年度の研究は17年度に引き続き,再生核となるグリーン関数を各種境界条件の下で構1成し,各種境界値問題とヒルベルト空間との対応関係を調べ,ソボレフ不等式の最良定数計算への応用を中心に研究を遂行し以下の研究成果を得た.グリーン関数があるヒルベルト空間の再生核である事実に基づいて,ソボレフ不等式の最良定数,最良関数を計算した.具体的には,高階2M階微分作用素に対する固定端,ディリクレ型,ノイマン型,自由端,周期境界条件に対応したソボレフ不等式の最良定数を計算した.固定端,ディリクレ型の境界条件を除く,ノイマン型,自由端,周期境界条件に関してはある可解条件,直交性条件を付加し対象直交化法と呼ばれる方法で一般化グリーン関数を構成することができ,再生核と対応するグリーン関数を構成することができた.固定端,自由端を除く3種類の境界条件の最良定数がベルヌーイ数,すなわちリーマンゼータ関数の偶数値で書けることが分かった.この結果は,リーマンゼータの特殊値に変分学的意味づけを与えた事になる.いずれの境界条件の場合も,グリーン関数の対角線値を調べる事でソボレフ不等式の最良定数を計算することができた.
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