研究概要 |
高エネルギー粒子加速器などに現れる放射する超相対論的電子の動力学の解明を目的として,本研究計画では,Lienard-Wiechert場の境界値問題として自然な形で上記の現象を取扱うことのできる時間領域境界要素法に着目し,同手法に基づく自己無撞着航跡場解析コードを開発する.とりわけ,同手法における深刻である計算時間および所要メモリの問題を克服すべく,スキームをハードウェア化した専用のコンピュータシステムの開発に関する研究を行った.本研究計画は,大別して, ・既存の時間領域境界要素法による航跡場解析コードを改良し自己無撞着航跡場解析コードを開発 ・FPGAによる時間領域境界要素法のアクセラレータボードを開発 の2項目からなり,これら研究項目の内訳として具体的にそれぞれ下記を実施した. (1)自己無撞着航跡場解析コードの開発 a.航跡場解析コードのソフトウェア的高速化手法・ウインドウオプション技術の検討とコード開発 b.ウインドウオプション技術付時間領域境界要素法解析コードの自己無撞着解析コード化 c.時間領域境界要素法解析コードの大規模問題への適用とウェークポテンシャル計算での精度確認 (2)時間領域境界要素法アクセラレータボードの開発 a.時間領域境界要素法専用計算機の方式およびシステム構成の検討および概念設計 b.小規模計算での全システムのVHDL回路記述,論理回路シミュレーションによる動作確認 また最終年度には,本研究計画の成果を将来実用化する際の実現可能性の検証を目的として,FDTD法に基づく専用計算機をベースに,そのプリント回路基盤化を実施し,専用計算機のプリント基板化に際しての実際のハードウェアサイズ,インターフェースピン数等の見積りを行った. さらに,自己無撞着航跡場のソフトウェア手法的高速処理方法の検討に際し,本研究課題の世界的な研究拠点の一つであるドイツ・ダルムシュタット工科大学・Weiland教授の研究グループから,Felix Wolfheimer研究員(平成17年度),Wolfgang Ackermenn助手(平成18年度)を招聘し,その具体的方法等について意見を伺うとともに研究討論を行ったことを付記しておく.
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