研究課題/領域番号 |
17540232
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴田 大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教授 (80252576)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2006年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2005年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 中性子星 / ブラックホール / 重力波 / 数値相対論 / 一般相対論 / ガンマ線バースト / 連星中性子星 |
研究概要 |
2つの中性子星からなる連星系は連星中性子星と呼ばれる。近接連星中性子星は重力放射によりエネルギーを失い、軌道半径を縮め、宇宙年齢以内に合体する。最新の統計的評価によると、我々の周り50Mpc以内に存在する銀河を全て考慮すれば、その中のいずれかでは年に1回程度、合体が起ると推定されている。合体直前には10Hz以上の重力波が放射されるが、これはアメリカのLIGO等の重力波検出器に対する最も有力な重力波源である。 連星中性子星の合体後には、ブラックホールまたは大質量の中性子星が誕生すると推測されている。ブラックホールが誕生し、周りに高温高密度の降着円盤が形成されれば、それはγ線バーストの発生源になるとする仮説が20年来提唱されている。しかしその正否は明らかではない。この仮説を強固な理論にするには、合体現象を数値計算で再現し、ブラックホールと高温高密度の降着円盤が実際に形成しうることを証明しなくてはならない。 本研究ではこれら2つの動機に基づいて、連星中性子星の合体に対する一般相対論的シミュレーションを実行した。そして、以下の結論を得た。(1)連星の合計の質量が太陽質量の約2.6--2.8倍を超えると、合体後、速やかにブラックホールが誕生する。ブラックホール形成のための質量閾値は、与える状態方程式に依存する。(2)質量が閾値以下の場合には、高速回転する大質量中性子星が誕生する。大質量中性子星は高速回転のため楕円体型をしているのが特徴である。楕円体型大質量中性子星は重力波放射のため、誕生後100ミリ秒程度で角運動量を失い、ブラックホールへ重力崩壊すると考えられる。(3)2つの中性子星の質量が異なる場合、誕生する天体の周囲に降着円盤が形成される。その質量は連星の質量比に依存するが、例えば3対2の場合でもせいぜい太陽質量の数%程度である。ただし、温度は約1000億度、密度は10^(12)g/cm^3と高温高密度である。(4)ブラックホールが誕生する場合、ブラックホールの準固有振動に付随した重力波が発生する。ただし、我々から50Mpcの距離の重力波源に対して振幅は約10^{-23}、周波数は約7kHzと低振幅、高周波数なので、次世代重力波検出器でも観測は難しいかもしれない。(5)大質量中性子星が誕生する場合、楕円体形状の天体が高速回転するので、準周期的重力波が発生する。その周波数は約3kHzで、実効振幅が50Mpcの距離の場合に10^{-20}程度になる。高周波ながら高振幅なので、次世代重力波検出器で検出されるかもしれない。ところで、大質量中性子星が誕生するのは、状態方程式が十分に硬い場合である。したがって検出された場合、状態方程式に強い制限が課されるので、検出は重要な意味を持つ。(6)質量比が大きく異なる中性子星同士が合体すると、質量の大きな降着円盤が誕生するので、観測されているようなγ線バーストが発生するかもしれない。
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