研究概要 |
本研究では,独自開発した実験装置により,液体キセノンシンチレータのシンチレーション光に対する屈折率を誤差0.01以下という高い精度で測定する研究を行った。本研究の主な成果は次の通りである: ・真空紫外〜可視の広い波長域で,圧力が10^5Paの気液平衡状態で液体キセノンの屈折率を誤差0.007という高い精度で測定することに成功し,波長の関数として1.38〜1.71の値を求めた。可視光における測定では,過去に行われた精度の良い屈折率の測定結果を再び得た。波長依存性は,良く知られたSellmeierの分散式に従うことを示した。 ・真空紫外域では,圧力が0.9×10^5Pa,1.2×10^5Paの気液平衡状態でも屈折率を測定し,液体キセノンの密度の違いによる屈折率の僅かな変化を測定した。これがLorentz-Lorenzの関係式に従うことを示した。 ・真空紫外域での屈折率は,以前に報告された値と有意に差異があることを明らかにした。その理由の考察を行った結果,以前の研究で用いられた実験手法には誤差の入り込む要因があることを見い出した。これに対し,我々の用いた実験手法は誤差が小さいことを追加の校正実験により確かめた。 ・研究の進展と結果は,各種の学会や修士論文で発表した。その一部は,希ガス検出器に関する国際的な図書に引用された。 屈折率の値は,まだ高い精度で知られていないシンチレーションの発光スペクトルと共に,キセノン液体中のレイリー散乱長の計算で重要な量であることを指摘した。その他,我々はキセノンの相変化に関する問題を副次的に明らかにした。本研究の結果は,キセノンの沸点が一般に知られている値と比べて,同じ圧力において約1K高いかもしれないことを示した。この違いは屈折率の研究では無視できるほど小さいが,液体キセノンを様々に応用する上で,今後の研究で解決すべき重要な課題である。
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