研究概要 |
この研究の目的は低温核偏極で原子核スピンを偏極させて,偏極核からのα、β線の角分布の測定実験を行い,原子核のクーロンポテンシャルの影響をみるものである。Si検出器の分解能を上げるため3He/4He希釈冷凍機の底の部分の改造設計を行った。0.7Kのシールド部分に設置されたSi検出器からのリード線は希釈冷凍機の下部から室温の外部に出る構造にした。しかし希釈冷凍機とプリアンプのシールドのやり方でノイズが変化して,分解能の飛躍的向上は得られなかった。そこで希釈冷凍機の上部から信号を取り出す方法で実験を行うことにした。オーストラリアのグループと95ZrNiの核整列の実験を行い,ベータ線検出でその異方性を測定したが,2%程度であった。また59FeNiのベータ線をSi検出器で検出して,約7mKの温度で偏極させ,NMR-ON共鳴の実験で,ニッケル中の鉄の内部磁場を-28.33(3)Tと決定し,緩和時間は外部磁場0.1Tで30(25)sと決定した。この内部磁場はこれまでメッスバウアー法を用いて報告されていた値,-28.3(3)Tと一致して,精度は1桁向上した。つぎに241Amの線源製作を試みた。はじめにガラスのプレパートの上に5kBqほど蒸発乾固したものをSi検出器で測定したところ5.485MeVのα線に対して分解能は33keVであった。純鉄に熱拡散させるため,241Amを5kBqほど蒸発乾固させたものを水素雰囲気中800度で約5分間,熱拡散させた。しかしながら熱拡散する前後でのα線のスペクトルはまったく変化がなく,拡散は起きなかったと思われる。このときの5.485MeVのα線に対して分解能は130keVであった。これは鉄が塩酸で溶けたことによるものと思われる。分解能をあげるためには241Amを加速させて,一様に埋め込むことが必要であることが判明した。
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