研究概要 |
この研究の目的は、超弦理論のどのようなフレーバー構造が導出できるかを研究し、そのフレーバー構造に関する現象論的な性質を明らかにすることであった。 現実的な湯川行列を導くために場の理論の模型として、離散的なnon-Abelianフレーバー対称性が最近注目されている。その起源については4次元の場の理論の立場からは、明らかではない。平成18年度に我々は、ヘテロ型オービフォルド模型において、コンパクト空間の幾何学的構造がこの離散的なnon-Abelianフレーバー対称性の起源になる可能性を示し、この4次元弦模型から導くことが可能な離散的なnon-Abelianフレーバー対称性を分類した。その典型的な対称性は、D4,Δ(54)などである。平成19年度では、D4フレーバー対称性のもとで、どのようなクォーク、レプトンの現実的な質量行列が導出可能なのかを研究した。更に、超対称性理論の枠組みでは、フレーバー対称性はクォーク、レプトンの質量行列を支配するのみでなく、そのスーパーパートナーであるスクォーク、スレプトンの質量行列(超対称性の破れの項)をも制限し、将来の加速器で検証できる可能性のある予言を与える。そのようなスーパーパートナーの質量行列の特徴的なパターンについて解析を行った。 その他、湯川結合を含む高次の結合項のモジュライ依存性の計算の研究やモジュライの値の決定機構、およびそれにともなう超対称性の破れとその現象論的な効果についての研究を行った。
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