研究概要 |
多次元ランジュバン方程式の4次元計算では,ポテンシャルエネルギー表面の数値微分などを多用するため,これを精度よく求めることが重要である。核形状を表すパラメータや殻補正の計算方法などに工夫し,数値計算上の安定性を増すよう改善を行った。 多モード核分裂に関しては,実験データとの比較を元にこの方法の優位性を示すと共に,改善すべき点を検討した。また,Fm系を例にとり核摩擦力が分裂片の運動エネルギー分布や質量分布にどのような変化をもたらすかを調べた。実験データとの比較では,ひとつの実験値(例えば分裂片の全運動エネルギー)のみを模型の優劣の判断基準にするのは不適切で,多くの種類のデータを同時に考える必要があることを指摘した。 確率微分方程式としてのランジュバン方程式の数値計算上の側面に注目し,実際の核融合分裂過程においてどのような影響をもたらすかを詳しく調べた。ひとつは,Ito流とStratonovich流の解釈の違いによる核分裂幅の変化であり,もうひとつは多次元確率微分方程式に現れる多重乱数積分の扱いによる核分裂幅の変化である。いずれも確率の小さい現象に顕著に違いが現れるため,超重元素の融合過程では注意が必要である。 重イオン融合反応におけるイオンの接触前の動力学に関して,入射・標的核の動的変形と配向を取り入れた計算を行い,バリアトップ付近を除いてその効果は,あまり大きくないことを見出した。合わせて,摩擦力の強さとして,深部非弾性散乱で得られた値をそのまま用いるのは問題があることを指摘した。 宇宙におけるr-過程元素合成において,核分裂を考慮に入れたシミュレーションを行った。この際,中性子過剰核における核分裂障壁を系統的に求め,非対称分裂を考慮した。
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