研究概要 |
本研究の目的は,光励起状態における歪んだペロブスカイト構造結晶(AGaO_3(A=La,Nd))のフォノン分散及び非調和フォノン解析を行うことにより,Librationalモードなどの回転振動の非調和効果のオリジンを解明することである.NdGaO_3結晶の赤外活性フォノンについては,290cm^<-1>以下のB_<1u>モードはGaO_6の八面体格子振動とNdの振動が顕著になり,scatteringとdecay processが支配的になることがわかった。LaGaO_3結晶の回転格子振動モードの非調和性については,ラマン分光実験との比較を行うことにより,DOS(phonon density of states)との関係を調べた。LaGaO_3結晶の高温相において低振動数回転格子振動モード(52cm^<-1>)はdecayとscattering processが支配的であるのに対し,屈曲モード(440cm^<-1>)はdecay processが支配的になることがわかった。LaAlO_3結晶についても同様の研究を行い,LaGaO_3結晶の高温相の結果をLaAlO_3結晶の場合と比較した。その結果,これらのモードのAnharmonic processの違いが,DOSのフォノンバンドギャップ効果に起因していることがわかった。一方,Anharmonicityに対するDOSのバンドギャプ効果を他の構造について検証するため,タングステン酸結晶についても格子力学計算を行い,DOSのバンドギャップが存在することを確認した.CaWO_4結晶のラマンスペクトル幅の温度変化に対する非調和効果がDOSのバンドギャップ効果によるものであることを示した。中性子散乱実験結果との比較や音響フォノン・イメージの解析を行うことにより,音響フォノン振動数に対する格子力学計算の有効性を調べ,低振動数のラマン活性フォノンに対する非調和解析結果の検討を行った。得られた研究成果の1部を国際会議(phonons2007)や日本物理学会年会で公表し,その研究論文はJournal of Physics:Conference SeriesやJournal of the Spectroscopical Society of Japanに掲載された.
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