研究概要 |
リン,アンチモンを含む充填スクッテルダイト化合物に関する研究は異方的超伝導,多極子転移など興味深い現象が多く発見され,物性研究は大きく進展している。しかし,砒素を含む充填スクッテルダイト化合物の研究は大きく立ち遅れている。この原因として試料合成が極めて困難であることがあげられる。高圧合成法を用いて,砒素を含む充填スクッテルダイト化合物の合成を試みているが,純良な単一相試料を得るまでには至っていない。そこで,本研究では砒素を含む充填スクッテルダイト化合物の純良試料を作成する方法を確立し,砒素を含む新充填スクッテルダイト化合物の物質開発と物性研究を目的とした。 高圧合成中の試料の変化を観察する方法として,放射光X線を用いる方法と,超音波を用いる方法の開発を行った。超音波法では,超小型探触子を高圧装置に使用するアンビルに取付け,本申請により購入したシグナルジェネレータを組み込んだ測定システムにより,常圧及び高圧下での超音波波形を観測する予備実験を行なった。放射光X線を用いた実験は高エネルギー加速器研究機構放射光施設において,高圧合成中の試料の"その場観察実験"を行い,試料作成条件を決定した。その結果を基に,砒素を含む充填スクッテルダイト化合物の合成を行い,CeRu_4As_<12>,PrRu_4As_<12>,SmFe_4As_<12>などの純良試料の合成に成功した。これらの試料の物性測定を行った結果,CeRu_4As_<12>は小さなギャップを持つ近藤半導体であることが分かった。また,PrRu_4As_<12>は超伝導を示すことが知られているが,詳細な比熱測定を行い,Prを含むスクッテルダイト超伝導体の系統的な比較研究を行った。その結果,この系の超伝導特性には結晶場状態が大きく影響している可能性を見出した。SmFe_4As_<12>は本研究で初めて合成に成功した新物質であり,フェリ磁性を示すことを発見した。
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