研究概要 |
PrPb_3の反強四重極子秩序状態における増強核磁性秩序の磁気・スピン構造の解明を目的に,超伝導磁束量子干渉計(SQUID)素子を零点検出器に利用した交流インピーダンスブリッジと,3He-4He希釈冷凍機と9T超伝導磁石から構成された銅一段核断熱消磁冷凍機を用いて,最低温度約1mK,磁場範囲0〜6.21mT,磁場方向[110],[100]で,PrPb_3の静磁化と交流帯磁率測定を同時測定した。その結果,PrPb_3は0.4K以下の反強四極子秩序状態において141Prの核磁気モーメントが約5mKで反強磁性秩序状態に転移すること,常磁性状態および反強磁性転移温度は磁気異方性を示さないが,反強磁性秩序状態では磁気異方性および磁場依存性を持つこと,約36mKで超伝導転移を示す可能性などを明らかにした。また,より高磁場での交流帯磁率測定を可能にするために,試料コイル4ケ,補償コイル1ケの計5ケの2次コイルと,交流磁場用1次コイル,静磁場印加ソレノイド,およびニオブ・ミューメタルの磁気シールドから構成された,同時に複数の試料の帯磁率を測定可能な高磁場交流帯磁率測定装置を開発した。さらに研究を発展させるため,日本原子力研究開発機構の目時グループと協力し超低温中性子回折測定計画に着手し,核磁気秩序状態でのスピン構造の直接測定に不可欠な超低温中性子回折測定用の核断熱消磁冷却ステージの開発を行った。これまでに,希釈冷凍機との間の超伝導熱スイッチ,温度測定用3He融解圧力温度計,熱リンク等を製作した。寒剤として1mK領域での冷却能力が優れた増強核磁性体PrNi_5は,良質な試料の購入が困難であるため,試作・試料評価を行い試料作成条件・方法の検討を行い,現在研究を継続中である。
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