研究概要 |
フラーレンピーポッドや金属内包フラーレンピーポッドと呼ばれる物質は、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)内にフラーレン(C_<60>,C_<70>)や希土類金属などを内包したフラーレン(M@C_<82>など)を内包した物質であり、ナノデバイス等への応用の観点から注目されている。本研究では、光電子分光法を用いてC_<60>,C_<70>フラーレンピーポッド(C_<60>@SWCNT,C_<70>@SWCNT)と金属内包フラーレンピーポッド(M@C_<82>@SWCNT[M=Gd,Dy,La])の電子状態を直接観測した。その結果,C_<60>@SWCNTとC_<70>@SWCNT中のC_<60>,C_<70>フラーレンの電子構造は,C_<60>,C_<70>薄膜のそれとの変化は観測されなかった。一方,M@C_<82>@SWCNT中のM@C_<82>の電子構造は,対応するM@C_<82>薄膜のそれとは異なった。すなわち,La@C_<82>@SWCMでは内包によって電荷移動が起こり,SOMO(the singly occupied molecular orbital)レベルがフェルミ準位近くに観測された。このことは,La@C_<82>@SWCNTがわずかなホールドーピングで容易にマルチキャリアー導体になることを示唆している。また,Dy@C_<82>@SWCNTでは,Dy@C_<82>のSWCMへの内包過程においてC_<82>ケージからDyに0.1個の電子移動が観測された。このように囎C_<82>@SWCNTの実験では,囎C_<82>のSWCNTへの内包前後で,M@C_<82>の電子構造に変化が起こり,新規ナノデバイスへの応用研究へつながる結果が得られた。
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