研究概要 |
UIrは結晶の空間反転対称性を持たないキュリー温度46K、磁化容易軸[10-1]のイジング型強磁性体であり、この物質に圧力を加えると常圧のFM1相からFM2相、FM3相と3つの強磁性相を経て、磁気秩序が消失する。このFM3相のキュリー温度がゼロになる2.6〜2.7GPaの量子臨界点近傍で転移温度が0.14Kである超伝導が電気抵抗により発見されている。 本研究において交流帯磁率測定においてUIrの強磁性FM3相で超伝導に伴うマイスナー効果の測定に成功した。強磁性FM2相では、磁化容易軸[10-1]の残留抵抗はFM1相やFM3相とほとんど変わらないのに対し、これに垂直な[010]方向ではFM1相に比べ、約10倍の急激な増大を示す非常に異方的な電気抵抗を持つことが明らかにした。臨界圧力近傍の電気抵抗から超伝導の上部臨界磁場を測定し、OKへの外挿値は[101]方向で約15mT、[10-1]方向で約32mTであることがわかった。また高圧下における[010]方向のドハース・ファンアルフェン効果にも成功し、1.0GPaでは5つの、また1.5GPaでは1つのドハースブランチが観測されたが、これらのすべてのブランチで電子のサイクロトロン有効質量が常圧のものとほとんど変化がないことを明らかにした。 さらに発展させて新しい化合物URhの単結晶育成を試みた。その結果、まだ完全な単結晶ではないが、組成比がおよそ1:1の均一相の物質を作り出すことに成功した。この物質のX線回折の結果はUIrと同じPbBi型結晶構造で説明でき、a=5.604Å,b=10.451Å,c=5.607Å,β=100.07°の空間群P2_1に属する単斜晶構造である。この試料はUIrと同じくイジング型の大きな磁気異方性を持ち、その容易軸方向の飽和磁化はUIrよりも大きい0.65μ_Bであることも明らかにした。
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