研究概要 |
超臨界流体において、通常の遅い熱拡散過程ではなく、音波による高速熱輸送が現実に起きていることが、独自に開発した、時間分解能1μsに及ぶ高速高精度の光学干渉計による測定により、確認されてきた。特に、加熱エネルギーの音波への変換効率が初めて実測され、後に行われた理論的予測と定量的に一致した。 この超高速熱輸送のメカニズムを研究するため、更に臨界点に接近する必要がある。しかし臨界点に接近するにつれ、流体の密度揺らぎが発散し、多重散乱光が急激に増大することが測定の障害となる。対策として、光源のレーザーを可視光から赤外線に変更した。散乱強度は光の波長の4乗に逆比例するため、迷光は大幅に低減でき、明瞭な干渉縞が得られた。 更に、宇宙実験を想定して、温度制御系など装置全体の小型化も進め、自動測定のために調整を必要としないための要素技術も開発した。特に、小型軽量で精密な温度制御系の開発が必要である。これまでの地上実験では、30kg以上の重厚長大な温度制御系を使用したが、宇宙では使用できない。今回開発した新型の軽量な温度制御ブリッジは、新たな原理に基づく装置であり、5kg以下でありながら、長時間に渡り臨界温度の近傍で0.15mK以内という充分な安定度と精度を持つことが確認できた。 これらの結果の一部は、米国の学術雑誌に発表され、また国際会議(Infomal Meeting for Physics in Micro-gravity, August 1,2006,International Symposium on Quantum Fluidsand Solids, Kyoto)、第23回宇宙利用シンポジウム(07年1月17日学術会議)、及び物理学会(06年9月;26pZA-6,07年3月;19pRD11)で速報された。更に解析を進め、追加して論文にまとめる予定である。
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