研究概要 |
電子ビームイオン源(EBIS)により生成した多価イオンを標的原子線と交差させ,弾性散乱および電荷移行反応の微分断面積を測定した.EBISの性能を改良した後に,C,N,O,F,Ne等の1〜5価イオンを入射イオンとし,He,Ne,Arを標的として実験室系のエネルギー10〜50eV程度で系統的に測定を行った.得られた実験結果について,非経験的量子論計算結果を用いた計算を行い,それらの比較から相互作用ポテンシャルの決定を試みた. 本研究では等核系列・等電子系列で実験結果を整理し,相互作用ポテンシャルの電子数依存性などについての一般的な知見を得る事を目指したが,今回行った衝突系では,イオンの価数の変化により非常に強い個性を示す事が分かり,衝突系毎の詳細解析が必要となった. C^<2+>,F^<2+>-He系では電荷移行反応断面積が非常に小さく,弾性散乱のみが観察された.理論計算で求められたポテンシャルを適当な関数で表し,古典軌道計算・量子論的計算を行い,実験的に求められた微分断面積と比較した所,非常に良い一致が見られ基底状態のポテンシャルを決定できた.しかし,N^<2+>,O^<2+>-He系では電荷移行反応断面積が大きく,弾性散乱微分断面積にもその影響が強く現れ,弾性散乱、反応両面から解析を行う必要性が認識された. また,N^<3+>,O^<3+>等の衝突では入射イオン中での電子再配置を伴う2電子性電荷移行反応のみが強く起きる事が分かり,低エネルギー衝突の特徴的な性格が判明しつつある.
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