研究概要 |
本研究は,北太平洋亜熱帯モード水(NPSTMW)の再出現現象を詳細に調べるとともに,北太平洋セクターで見出されている気候の20年周期変動との関係を解明することを目的とした.本研究で得られた成果は,以下のようにまとめられる. 1.NPSTMWは定在型再出現現象を示すとともに,北太平洋中央部に遠隔型再出現現象も発現させる.この理由は,NPSTMWが黒潮続流域南部に形成されるため,その水塊の一部が中央部に移流されるためである. 2.東部亜熱帯モード水は再出現現象を示さないが,その要因は,モード水下部におけるソルトフィンガー型の二重拡散対流混合と,弱い海面加熱によりモード水が大気の強制から遮断されないことにより,水質の変化が大きいためである. 3.NPSTMWの遠隔再出現現象は,約20年の周期で,再出現と非再出現を繰り返していることがわかった.この要因は,アリューシャン低気圧の消長であり,アリューシャン低気圧の変動から約6-8年の時間遅れをともないながら追随している. 以上の結果より,NPSTMWの遠隔型再出現現象が,北太平洋セクターにおける約20年の気候変動に大きな役割を担っていることが強く示唆される.すなわち,アリューシャン低気圧の強化が亜熱帯循環系のスピンアップを生じさせ,黒潮がNPSTMW形成域に暖水を供給する.その一部が中央部に移流され,再出現現象を発現させる.その結果,中央部の冬季海面水温が上昇し,結果としてアリューシャン低気圧を弱化させる.次に逆のプロセスが起こり,1サイクルを閉じる.これらのプロセスの時間遅れが,約20年の周期性を作り出すというものである.
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